論文抄録

第118巻第9号

臨床研究

糖尿病黄斑浮腫患者を対象としたペガプタニブナトリウムの国内第III相臨床試験
石橋 達朗1), 湯澤 美都子2), 吉村 長久3), 大路 正人4), 石田 晋5), 五十川 直樹6), 江坂 悦子6)
1)九州大学大学院医学研究院眼科学分野
2)日本大学医学部視覚科学系眼科学分野
3)京都大学大学院医学研究科眼科学
4)滋賀医科大学眼科学講座
5)北海道大学大学院医学研究科眼科学分野
6)ファイザー株式会社

目 的:糖尿病黄斑浮腫患者に対するペガプタニブナトリウムの有効性と安全性を評価する.
対象と方法:糖尿病黄斑浮腫患者243例に,二重盲検期(24週まで)はペガプタニブナトリウムの硝子体内投与もしくはsham投与を6週ごとに1回,計4回行った.非盲検期(24週から54週まで)はペガプタニブナトリウムの硝子体内投与を6週ごとに1回,計5回行った.有効性の主要評価は24週時点,安全性評価は54週までとした.
結果と結論:Early Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)視力表を用いた視力が10文字以上改善した被験者の割合は,ペガプタニブナトリウム群で20.3%,sham群で5.0%であり,有意な差が認められた(p=0.0003).二重盲検期において治験薬との因果関係を否定できない有害事象の発現率は,両群で同程度(ペガプタニブナトリウム群で10.6%,sham群で10.0%)であり,報告された主な有害事象は,軽度または中等度の投与手技に起因すると判断された眼に関する事象であった.54週までの非盲検期において,二重盲検期と比較して新たな安全性の問題は認められなかった.ただし,盲検性維持に関するプロセス上の問題を考慮すると,本治験は完全な二重盲検試験ではなかった.(日眼会誌118:773-782,2014)

キーワード
糖尿病黄斑浮腫, ペガプタニブナトリウム, 薬物療法, アプタマー, 血管内皮増殖因子
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〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学大学院医学研究院眼科学分野 石橋 達朗
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