論文抄録

第120巻第5号

臨床研究

網膜静脈分枝閉塞症の発症早期にベバシズマブ硝子体内投与を行った症例の長期予後
説田 雅典1)3), 尾崎 志郎2), 田淵 昭雄3)
1)大垣市民病院眼科
2)尾崎眼科
3)川崎医療福祉大学

目 的:網膜静脈分枝閉塞症の発症早期にベバシズマブ硝子体内投与を行い,2年以上の経過観察が可能であった症例を後ろ向きに検討する.
対象と方法:対象はベバシズマブ硝子体内投与を行った黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症30例30眼.発症から投与までの期間は平均5週,観察期間は平均30か月.初回投与後12か月,24か月での視力を評価し,logarithmic minimum angle of resolution(logMAR)0.3以上の変化を改善,それ未満を不変とした.全例初回投与後6か月間は毎月の経過観察を行い,再投与は黄斑浮腫が残存,再燃した場合に施行した.それ以後は必要に応じて再投与,あるいは光凝固も含めての追加治療を行った.
結 果:視力(平均値±標準偏差)は投与前,12か月後,24か月後でlogMAR 0.59±0.24,0.04±0.15,0.06±0.19.LogMAR 0.3以上の改善は12か月後で90%,24か月後で80%であった.
結 論:黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症に対して,発症早期からのベバシズマブ硝子体内投与は,一部の症例を除き長期における視力改善に寄与すると考えられた.(日眼会誌120:396-402,2016)

キーワード
網膜静脈分枝閉塞症, 早期投与, 黄斑浮腫, 長期観察, ベバシズマブ
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