論文抄録

第121巻第11号

症例報告

病初期から観察できたparaneoplastic cloudy vitelliform submaculopathyの1例
久次米 佑樹, 加賀 郁子, 永井 由巳, 山田 晴彦, 髙橋 寛二
関西医科大学眼科学教室

背 景:原発眼内悪性リンパ腫(PIOL)の病初期に黄斑部網膜下に一過性の卵黄様沈着物を認める症例が近年報告されている.今回,病初期から多彩な黄斑病変の推移を光干渉断層計(OCT)で観察できたPIOLによるparaneoplastic cloudy vitelliform submaculopathyの症例を経験したので報告する.
症 例:症例は49歳の男性.左眼視力低下,視野欠損を主訴に受診した.病初期に一過性の卵黄様黄斑症所見を認め,OCTで黄斑下に大量の沈着物と網膜色素上皮(RPE)ラインの波打ち様肥厚を認めた.その後,周辺網膜での複数の結節病巣の出現,それらの癒合拡大と多彩な網膜病変を認めたため硝子体生検を行ったところ,細胞診にて異形リンパ球が検出され,インターロイキン(IL)の定量により,IL-10/IL-6比の著明な上昇を認めた.頭蓋内magnetic resonance imaging(MRI)に異常はなかったためPIOLと診断した.メトトレキサート(MTX)硝子体内注射で眼内病変は退縮したが,治療中に頭蓋内病変を認めたため,MTX全身大量療法,頭蓋内放射線照射を施行し,腫瘤は縮小した.現在,残存腫瘤に対して化学療法を施行中である.
結 論:PIOLの診断に,病初期の一過性卵黄様黄斑症所見とOCTにおけるRPEラインの波打ち様肥厚は重要な所見と思われた.(日眼会誌121:871-877,2017)

キーワード
Paraneoplastic cloudy vitelliform submaculopathy, 光干渉断層計, 網膜色素上皮ラインの波打ち様肥厚, 原発眼内悪性リンパ腫
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