強度近視は本邦に多く,その人口は今後も増加するとされる.強度近視は特有の眼底病変だけでなく,白内障や緑内障など多岐にわたる合併症を生じ,分野にかかわらず眼科医にとっては避けて通れない問題である.中心窩分離症とそれに続発する黄斑円孔網膜剝離は,網膜内面に牽引力として作用する硝子体皮質,黄斑前膜そして内境界膜の牽引と後部ぶどう腫の形成が原因である.硝子体手術が第一選択で,網膜の牽引力の除去が肝要となる.黄斑円孔網膜剝離は,特発性に比べて術後の円孔閉鎖率や復位率が芳しくない.最近は黄斑円孔の閉鎖を促進する試みとして,内境界膜翻転法が広く行われるようになった.近視性脈絡膜新生血管(CNV)は,抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が第一選択である.治療には良好に反応するが,再発が問題である.現在,通常の光干渉断層計(OCT)と蛍光眼底造影撮影が診断の主役を務めるが,今後はさらに進化したOCT-angiographyや偏光OCTによって,早期診断や正確な活動性の評価が可能になるかもしれない.乳頭黄斑線維束障害の先行や若年発症が多いなどの特徴を持つ強度近視の緑内障,特に正常眼圧緑内障のメカニズムは未だ明らかではない.画像診断の進歩により,視神経乳頭やその周囲に,我々が知らなかったさまざまな変化が起こっていることが明らかになりつつある.今後の研究が病態解明に大きく寄与すると期待される.(日眼会誌121:292-313,2017)