論文抄録

第121巻第5号

症例報告

若年成人にみられた続発性網膜剝離を伴う後天性周辺部網膜分離症の1例
本田 茂, 中村 賢和, 中村 誠
神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野

背 景:後天性網膜分離症は一般に中年以降の網膜周辺部にみられることがある疾患で,大部分は無症候性に経過するが,まれに続発性網膜剝離を生じ,治療が必要になることがあるとされている.今回,我々は若年成人に生じた後天性周辺部網膜分離症に黄斑近傍に及ぶ網膜剝離を合併し,手術加療を行った1例を経験したので報告する.
症 例:27歳男性.検診で近医を受診した際に,右眼の網膜剝離を指摘された.
所 見:眼底検査で右眼に鼻上側から黄斑直上に迫る網膜剝離を認め,鼻上側周辺部には円形の胞状剝離と微小円孔を認めた.光干渉断層計では黄斑異常を認めなかった.当初は若年者の網膜周辺部萎縮円孔による網膜剝離と診断し,部分強膜バックリング術とSF6ガス注入を行った.術後は網膜下液の大幅な減少がみられたが,バックル上の網膜は依然胞状を呈していた.眼内ガスの減少に伴い再度網膜剝離が増加してきたため,Bモード超音波断層検査を行ったところ,バックルの隆起上に網膜分離症様所見を認めた.網膜剝離が黄斑部に及んでいたため硝子体手術を追加し,人工的後部硝子体剝離を作製後,網膜下液を除去して網膜分離症周囲にレーザー光凝固を行った.術後,網膜は全復位,網膜分離症もバックル上でほぼ平坦化した.
結 論:若年成人であっても後天性網膜分離症に伴う網膜剝離は生じ得る.また,手術治療により良好に治癒し得ることが示された.(日眼会誌121:431-435,2017)

キーワード
若年成人, 網膜分離症, 後天性, 網膜剝離
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