背 景:Fuchsぶどう膜炎は慢性虹彩毛様体炎,虹彩異色あるいは萎縮,白内障を3主症状とする疾患である.海外の報告では両眼性のFuchsぶどう膜炎の頻度は10%前後であるが,我が国での報告はきわめてまれである.地域医療機能推進機構東京新宿メディカルセンターで両眼性Fuchsぶどう膜炎と診断した5症例を提示する.
症 例:症例1~3は両眼の虹彩後癒着を伴わない慢性虹彩毛様体炎,虹彩萎縮,白内障,硝子体混濁がみられた.他のぶどう膜炎を示唆する所見もなく本症と診断した.症例4はすでに両眼の虹彩毛様体炎と診断されていた.初診時,左眼の虹彩萎縮と白内障が認められた.副腎皮質ステロイド点眼を中止し経過観察していたところ,右眼にも白内障と虹彩萎縮が出現した.症例5は両眼ともすでに白内障手術が行われており,原因不明の硝子体混濁として継続的に副腎皮質ステロイド点眼で治療されていた.副腎皮質ステロイド点眼中止後の角膜後面沈着物の出現や両眼のAmsler徴候陽性,前房水抗風疹抗体陽性により最終的に本症と診断した.
結 論:両眼性ぶどう膜炎の鑑別診断として両眼性Fuchsぶどう膜炎も考慮する必要がある.(日眼会誌121:535-545,2017)