論文抄録

第122巻第2号

臨床研究

フルオレセイン蛍光眼底造影における副作用の危険因子と安全対策
大矢 佳美, 中村 裕介, 安藤 伸朗
済生会新潟第二病院眼科

目 的:フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)における副作用の危険因子を明らかにし,安全対策を立てる.
方 法:過去4年間にFAを施行した症例を対象に,副作用について後ろ向きに検討した.
結 果:直近のFAでの副作用発現率は3.93%(48/1,220例)であり,嘔気・嘔吐が77.08%を占めた.多重ロジスティック回帰分析の結果,副作用の発現には若年(1歳あたりのオッズ比:0.97)と副作用の既往あり(オッズ比:15.94)が有意に関与していた.嘔気・嘔吐の既往歴のある47例中28例に制吐薬が予防投与されたが,予防効果に有意差はなかった.アナフィラキシーショックの1例は,検査前に摂取した食事の嘔吐のため,気管挿管に至り蘇生に苦慮した.
結 論:比較的若く,副作用の既往歴がある患者ではFAの施行に際しては十分な注意が必要である.嘔吐を予防するために,FA前の4時間以内の食事と1時間以内の飲水を禁止することを推奨する.(日眼会誌122:95-102,2018)

キーワード
フルオレセイン蛍光眼底造影, 副作用, 嘔吐, 予防, アナフィラキシーショック
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