論文抄録

第122巻第5号

臨床研究

内眼炎遷延症例に対する硝子体手術の有用性
丸山 和一1)2), 橋田 徳康2), 高 静花1)2), 中澤 徹3), 西田 幸二2)
1)大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学寄附講座
2)大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)
3)東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座

目 的:内眼炎は,薬物治療を施しても遷延する黄斑浮腫,黄斑上膜の形成,硝子体混濁により視力低下が進行する症例がある.そのような症例に対して外科的治療(硝子体手術)が選択されることがある.今回我々は,薬物治療において症状の改善が得られず外科的治療を行った内眼炎の術後臨床経過について検討を行った.
方 法:東北大学病院において,硝子体手術後3か月間経過観察可能であったサルコイドーシス内眼炎45眼,眼内リンパ腫14眼,感染性眼内炎11眼,原因不明16眼を対象とした.それぞれの群において手術前,術後1か月,3か月の視力経過と黄斑厚を観察した.
結 果:全症例を対象とした結果,手術前と比較して術後平均視力は有意に改善した(p<0.001).なかでも,サルコイドーシス内眼炎,眼内リンパ腫においては術前視力と比較すると,術後1か月より有意に視力改善が認められた(p<0.05).しかし,感染性眼内炎,原因不明の症例においては,視力改善があるものの術前と比較して有意な改善を認めなかった.黄斑厚についてはすべての疾患群において術前後での有意な差は認めなかった.
結 論:薬物治療によって視力改善が得られなかった内眼炎において,過去の多くの報告と同様に外科的治療によってサルコイドーシス内眼炎,眼内リンパ腫では術後に視力改善が得られることが判明した.今後,内眼炎において薬物治療で改善しない症例に対しては外科的治療も一つの選択肢と考えられる.(日眼会誌122:393-399,2018)

キーワード
ぶどう膜炎, 硝子体手術, 視力経過, 黄斑厚
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〒565-0871 吹田市山田丘2-2 大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学寄附講座 丸山 和一
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