論文抄録

第122巻第5号

症例報告

美容外科において角膜実質内にヒアルロン酸ナトリウムが誤注入された1例
日野 智之1), 上田 真由美1)2), 木下 茂2), 外園 千恵1)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)京都府立医科大学感覚器未来医療学

目 的:美容外科クリニックにて上眼瞼にヒアルロン酸ナトリウムを注入される処置を受けた際に,誤って,角膜実質内にヒアルロン酸ナトリウムが注入された1例を経験したので報告する.
症 例:34歳女性,美容外科クリニックにて,上眼瞼にヒアルロン酸ナトリウムを注入する美容外科手術を受けた.特に眼痛なく処置を終了したが,処置直後より左眼の視力低下を自覚,左眼角膜が白濁しており,近医を受診した後に,当科を紹介受診となった.初診時の矯正視力は指数弁であり,角膜実質内にヒアルロン酸ナトリウム注入による間隙を認めた.自然吸収を待ったが,約2か月間の経過観察で明らかな改善を得られなかった.外来にて30ゲージ針を用いた吸引を試みたが吸引できず,手術室にて穿刺吸引,洗浄,前房内空気注入を行った.除去術後5か月の時点で角膜実質深層の混濁が淡く持続していたが,矯正視力は0.4まで改善した.
結 論:角膜実質内に美容目的のヒアルロン酸ナトリウムが注入された際には,外科的加療が必要である.ヒアルロン酸ナトリウム注入時には,本症例のような重篤な合併症を避けるためにも,誤注入に細心の注意が必要である.(日眼会誌122:406-409,2018)

キーワード
美容用ヒアルロン酸ナトリウム, 誤注入, 角膜混濁
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