目 的:Boston keratoprosthesis(Boston KPro)移植後に生じた真菌性角膜炎の特徴と予後を検討すること.
対象と方法:宮田眼科病院において2008年1月から2015年3月までの間にBoston KPro移植術を行った症例を対象とした.真菌性角膜炎の発症率,Boston KPro移植後から発症までの期間,年齢,矯正視力(logarithmic minimum angle of resolution:logMAR),起炎菌および治療経過について診療録より後ろ向きに検討した.
結 果:9例11眼が対象となり,術後観察期間は59.8±15.8か月(平均値±標準偏差)であった.4例4眼(36.4%)で真菌性角膜炎を認め,発症率は0.090/人年であった.発症までの平均期間は33.3±26.3か月,発症時の平均年齢は60.0±20.6歳であった.平均矯正視力は,発症前が0.29±0.38,治療後は1.29±1.28であった.塗抹鏡検および培養検査で真菌が検出された症例は認めず,nested-polymerase chain reaction(PCR)検査では1眼で真菌28S rRNAをコードする塩基配列を,2眼でAspergillusゲノムの塩基配列を検出した.
結 論:Boston KPro移植後の真菌性角膜炎は,視力低下を生じる重篤な合併症である.Boston KPro周囲に感染徴候を認めた場合には真菌性角膜炎を考慮し,抗真菌薬の投与を検討することが重要である.(日眼会誌122:509-516,2018)