論文抄録

第122巻第7号

症例報告

両眼の中心暗点により発症した可逆性後部白質脳症症候群の1例
鈴木 崇弘, 河野 通大, 中川 喜博, 鈴木 康之
東海大学医学部専門診療学系眼科学

背 景:可逆性後部白質脳症症候群(PRES)は1996年にHincheyらにより報告された疾患で,後頭葉白質を中心に一過性の脳浮腫を来す症候群である.患者は頭痛,意識障害,精神症状,けいれん,視力障害を呈する.今回我々は,両眼の中心暗点を認めたPRES患者を経験し,magnetic resonance imaging(MRI)および視覚野の所見との関係性を検討した.
症 例:58歳男性.高血圧を伴う全身性エリテマトーデス(SLE)の再発と両眼の視力障害が疑われ当院を紹介受診となった.矯正視力は両眼ともに指数弁であり,両眼に中心暗点を認めた.眼底検査で両眼に点状出血,綿花状白斑を認めた.頭部MRIにて,両側頭頂葉・後頭葉の皮質および皮質下白質に高信号を認め,矢状断では特に鳥距溝の後部を中心とした高信号域を認めた.経過よりPRESと診断し,副腎皮質ステロイド療法と降圧療法を開始,視力・視野ともに回復し,MRI所見も消失した.
結 論:PRESは脳浮腫の部位によりさまざまな眼症状を呈するが,鳥距溝の後部中央部の浮腫では両眼の中心暗点を認めることがある.(日眼会誌122:517-522,2018)

キーワード
可逆性後部白質脳症症候群, 両眼中心暗点, 鳥距溝浮腫, 視覚野, 全身性エリテマトーデス
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