論文抄録

第122巻第8号

臨床研究

中枢神経浸潤を伴う眼内原発リンパ腫における生検結果の再考
福富 啓1), 岩橋 千春2), 吉岡 茉衣子3), 小野 ひかり3), 春田 真実3), 南 高正3), 眞下 永3), 下條 裕史3), 大黒 伸行3)
1)愛知医科大学眼科学教室
2)住友病院眼科
3)地域医療機能推進機構大阪病院眼科

目 的:眼内原発中枢神経悪性リンパ腫の診断における硝子体中サイトカイン測定および細胞診の有効性を検討する.
対象と方法:対象は2010年12月から2017年3月までに地域医療機能推進機構大阪病院眼科を受診し,眼内原発リンパ腫に合致する眼所見を有した症例のうち,経過中に脳内病変を発症し,かつ全身化学療法施行後に脳内病巣の消失を得たことから眼内原発中枢神経悪性リンパ腫との診断に至った18眼.硝子体中のサイトカイン比がinterleukin(IL)-10/IL-6>1であること,細胞診検査でclass IV以上であることを陽性として生検陽性率を検討した.次いで,臨床像や生検前の副腎皮質ステロイド加療の有無が生検結果に影響するかについて検討した.また,IL-10の実測値が補助診断の指標となりうるかについても検討を加えた.
結 果:サイトカイン比は55.6%,細胞診は33.3%が陽性であった.一方,サイトカイン比と細胞診がともに陰性の症例は22.2%であった.サイトカイン比あるいは細胞診が陽性であった症例は副腎皮質ステロイド加療歴がない7眼中の7眼,および副腎皮質ステロイド加療歴がある11眼中の7眼であり,有意差はないが副腎皮質ステロイド加療歴がない群で陽性率が高かった.またIL-10実測値が50 pg/mL以上の症例は66.7%であった.
結 論:約8割の症例はサイトカイン比,細胞診の検査結果より診断可能であった.一方で,サイトカイン比,細胞診だけでは診断できない眼内原発リンパ腫が約2割に存在した.(日眼会誌122:559-564,2018)

キーワード
眼内原発リンパ腫, サイトカイン, 細胞診
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