目 的:Tm mapping法は敗血症起炎菌の迅速同定を目的に開発された.この方法を応用して,術後細菌性眼内炎の数的優位菌を3.5時間以内に同定することができたので報告する.
対象と方法:対象は,2014年8月から2016年12月までに富山大学附属病院で臨床的に術後細菌性眼内炎と診断された連続症例4例4眼.手術時に採取した眼内液を用いて,Tm mapping法を施行した.Tm mapping法でdifference value値(DV)が0.5以下の細菌を同定できた場合,その結果を同定適用とした.
結 果:症例1ではStaphylococcus epidermidis(DV=0.06),症例2では,Staphylococcus capitis(DV=0.19),症例4ではStaphylococcus caprae(DV=0.28)が同定された.症例3では細菌DNAは検出されたが,データベース中に該当菌種が存在しなかった.4例中3例で3.5時間以内に数的優位菌を同定することができた.
結 論:細菌性眼内炎の数的優位菌を3.5時間以内に同定するシステムを確立した.迅速同定により早期の適切な抗菌薬選択が可能になると思われる.本法導入により,細菌性眼内炎の予後改善につながる可能性がある.(日眼会誌122:580-585,2018)