論文抄録

第123巻第1号

臨床研究

特集 学会原著:第122回日眼総会
視覚障害者用補装具費支給に関する市区町村の現況と課題
清水 朋美1), 仲泊 聡2), 白銀 暁3), 井上 剛伸3)
1)国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部
2)理化学研究所生命機能科学研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト
3)国立障害者リハビリテーションセンター研究所福祉機器開発部

目 的:視覚障害者用補装具の補装具費支給決定を行う市区町村の現況と課題を明らかにすること.
対象と方法:全国の1,741市区町村を対象にアンケート調査を行った.今回はコンタクトレンズと遮光眼鏡に関する設問に絞った.また,A市とB市の二つの市の補装具担当者を対象に,現況,課題,コンタクトレンズ,遮光眼鏡に関して半構造化面接による聞き取り調査を行った.
結 果:計909市区町村から回答を得た(回答率52.2%).コンタクトレンズでは,交付で困ることについては,「困っていない」という回答が多かったが,いずれも「交付実績がない」というのが理由であった.遮光眼鏡では,遮光率によって遮光眼鏡として交付しないか否かに関しては,「いいえ」が78%,「はい」は1%であった.視野障害のみで遮光眼鏡に度数を入れることを許可しているかについては,「はい」が53%,「いいえ」は13%であった.聞き取り調査では,二つの市ともに現況,課題は共通していた.コンタクトレンズについては同じ対応であったが,遮光眼鏡については対応に違いがみられた.
結 論:市区町村の補装具費支給決定の手順,課題は共通しているが,その決定に違いがあることが明らかになった.また,課題の解決には眼科との連携が必要な可能性がある.(日眼会誌123:24-31,2019)

キーワード
視覚障害者, 補装具, 市区町村, 障害者総合支援法, ロービジョンケア
別刷請求先
〒359-8555 所沢市並木4-1 国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部 清水 朋美
shimizu-tomomi@rehab.go.jp