論文抄録

第123巻第1号

臨床研究

ドナー角膜保存液の微生物汚染状況および培養陽性例の検討
子島 良平1), 森 洋斉1), 小野 喬2), 長井 信幸1), 野口 ゆかり1), 岩崎 琢也1), 宮田 和典1), 天野 史郎3)
1)宮田眼科病院
2)東京大学医学部眼科学教室
3)井上眼科病院

目 的:ドナー角膜保存液の微生物汚染状況ならびに培養陽性例の術後経過を検討すること.
対象と方法:対象は1999年5月から2014年8月までに宮田眼科病院で角膜移植術に用いたドナー角膜463眼.角膜移植術終了時にドナー角膜保存液にスワブを浸漬して検体を採取し培養検査を行った.培養検査で陽性となった角膜を使用した症例の術後経過について検討した.
結 果:培養検査では,微生物10株が検出された.内訳は,細菌が7眼から計8株,カンジダ属が2眼から2株であった.角膜移植後の経過は,細菌が検出された角膜を使用した7症例では術後眼内炎や炎症が遷延した症例はなかった.一方,カンジダ属が検出された角膜を使用した2症例は術後3~4週目で眼内炎を発症し,治療するも抵抗性であった.
結 論:ドナー角膜保存液からの微生物学的検査は,術後眼内炎の発症を抑えるという観点から重要である.ドナー角膜保存液から真菌が検出された症例では眼内炎を発症する可能性が高く,注意深い経過観察が必要である.(日眼会誌123:58-63,2019)

キーワード
角膜移植, 真菌性眼内炎, ドナー角膜, 眼球保存液, オプチゾールGS
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〒885-0051 都城市蔵原町6-3 宮田眼科病院 子島 良平
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