目 的:ドナー角膜保存液の微生物汚染状況ならびに培養陽性例の術後経過を検討すること.
対象と方法:対象は1999年5月から2014年8月までに宮田眼科病院で角膜移植術に用いたドナー角膜463眼.角膜移植術終了時にドナー角膜保存液にスワブを浸漬して検体を採取し培養検査を行った.培養検査で陽性となった角膜を使用した症例の術後経過について検討した.
結 果:培養検査では,微生物10株が検出された.内訳は,細菌が7眼から計8株,カンジダ属が2眼から2株であった.角膜移植後の経過は,細菌が検出された角膜を使用した7症例では術後眼内炎や炎症が遷延した症例はなかった.一方,カンジダ属が検出された角膜を使用した2症例は術後3~4週目で眼内炎を発症し,治療するも抵抗性であった.
結 論:ドナー角膜保存液からの微生物学的検査は,術後眼内炎の発症を抑えるという観点から重要である.ドナー角膜保存液から真菌が検出された症例では眼内炎を発症する可能性が高く,注意深い経過観察が必要である.(日眼会誌123:58-63,2019)