目 的:急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)発症後に脳梗塞を合併した1例の臨床経過を報告し海外文献をレビューする.
症 例:29歳男性.熱発後に全身倦怠感が2か月持続し,APMPPEを発症した.光干渉断層血管撮影では脈絡膜内層の循環障害を認めた.APMPPEは自然軽快したが,発症から1か月後に脳幹梗塞を発症した.Magnetic resonance angiography(MRA)では右後大脳動脈狭窄を認め,脳血管炎が示唆された.髄液検査では髄液細胞数増多,蛋白増多,interleukin(IL)-6の上昇がみられた.治療では副腎皮質ステロイド薬を10か月間経口投与し,後遺症なく軽快した.APMPPEに脳梗塞を合併した既報14篇のレビューでは,APMPPE発症から約2か月で脳梗塞を発症していた.神経症状のうち最も多かったのが頭痛(66.7%)で,脳血管狭窄(90.9%)や髄液細胞増多(83.3%)が共通した所見であった.副腎皮質ステロイド投与中にもかかわらず新規脳梗塞を発症する例が過半数あった.
結 論:APMPPE発症後に重症の頭痛や神経症状を生じた場合は,中枢神経病変の合併を疑って髄液検査や頭部画像検査を積極的に行う必要がある.治療では副腎皮質ステロイドの大量かつ長期投与が望ましい.(日眼会誌123:969-976,2019)