論文抄録

第123巻第11号

臨床研究

ドライアイに合併した糸状角膜炎の機序とその治療の現状
青木 崇倫1), 横井 則彦1), 加藤 弘明1), 小室 青1), 薗村 有紀子1), 外園 千恵1), 木下 茂2)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)京都府立医科大学感覚器未来医療学

目 的:ドライアイ治療にムチン・水分分泌促進点眼剤やムチン産生促進剤が登場し,ドライアイ関連疾患である糸状角膜炎(FK)の原因,治療実態が従来とは異なる可能性がある.そこで,ドライアイに合併したFKの原因と治療をレトロスペクティブに検討した.
対象と方法:京都府立医科大学附属病院眼科にて治療中のドライアイのうち,FKを合併した53例53眼(平均年齢69.8歳)を対象とし,①ドライアイの診断,②推定されるFKの機序(涙液減少,摩擦亢進,複合機序の3分類),③FK発見時の治療,④そのFKの改善を得るために行われた治療について検討した.
結 果:ドライアイに合併したFKは,ドライアイ確定例で最も多く(87%),推定される機序は涙液減少が多かった(74%).推定される機序によらず,その発見時にジクアホソルナトリウム点眼液を使用している例が多かった(涙液減少:39%,摩擦亢進:30%,複合機序:75%).涙液減少が主な機序と考えられるFKでは,その改善に,上・下涙点プラグの挿入を要した例が多く(71%),摩擦亢進が主な機序と考えられるFKでは,レバミピド懸濁点眼液での改善が最も多かった(63%).
結 論:ジクアホソルナトリウム点眼液の使用がFKの発生リスクとなる可能性が示唆され,涙液減少に伴うFKには涙点プラグが有効であり,摩擦亢進に伴うFKにはレバミピド懸濁点眼液が有効と考えられた.(日眼会誌123:1065-1070,2019)

キーワード
糸状角膜炎, ドライアイ, 涙点プラグ, ジクアホソルナトリウム点眼液, レバミピド懸濁点眼液
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