論文抄録

第123巻第2号

臨床研究

特集 学会原著:第122回日眼総会
続発緑内障に対するテノン開創器を用いた線維柱帯切除術の短期成績
楠原 仙太郎, 中村 誠
神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野

目 的:続発緑内障に対するテノン開創器を用いた線維柱帯切除術の短期成績を調べること.
対象と方法:2016年4月から2017年5月までの期間に神戸大学医学部附属病院で続発緑内障に対してテノン開創器を用いたマイトマイシンC併用線維柱帯切除術が施行された,連続11例12眼を後ろ向きに評価した.本新術式は,①テノン開創器で強膜とテノン囊の間に十分なスペースを確保し強膜の後方スペースに広くマイトマイシンC含有スポンジを留置する点,②強膜フラップ後方を無縫合とする点,③輪部結膜付近に3 mm×6 mmのブロッキング糸をかける点が特徴である.治療効果については,手術前後における眼圧および緑内障点眼スコアの変化および術後処置の内容で評価した.
結 果:続発緑内障の原因は,ぶどう膜炎続発緑内障6眼,血管新生緑内障4眼,落屑緑内障2眼であった.平均眼圧は,術前の34.8±13.8 mmHgから術後12か月で18.1±4.0 mmHgと,有意に低下していた(p<0.001).平均点眼スコアについても,術前の4.3±1.2から術後12か月で1.1±1.5と有意に低下していた(p<0.001).術後結膜下瘢痕に対して濾過胞再建を要した血管新生緑内障の1例を除き,術後処置(レーザー切糸,結膜縫合を含む)を必要とした症例はなかった.
結 論:続発緑内障に対するテノン開創器を用いた線維柱帯切除術は短期経過では有望な術式であると推測される.(日眼会誌123:121-127,2019)

キーワード
テノン開創器, 線維柱帯切除術, 続発緑内障, 眼圧
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