論文抄録

第123巻第2号

臨床研究

2014~2016年における細菌性角膜炎からの分離株に対する抗菌薬感受性の年別推移
上田 晃史, 子島 良平, 小野 喬, 野口 ゆかり, 八木 彰子, 岩崎 琢也, 宮田 和典
宮田眼科病院

目 的:細菌性角膜炎の角膜病変から分離された細菌の抗菌薬感受性について年別の推移を解析する.
対象と方法:2014年から2016年までの3年間に宮田眼科病院を受診し,細菌性角膜炎と診断し,角膜病変の細菌学的検査を実施した312例315眼を対象とした.細菌分離陽性率,分離株の内訳,最小発育阻止濃度(MIC)の年別推移,累積発育阻止率を検討した.
結 果:細菌分離陽性率は2014年64.1%,2015年72.5%,2016年76.4%(平均70.2%)で,分離株数は342株であった.内訳はStaphylococcus epidermidis 55株,Staphylococcus aureus 28株〔うちmethicillin-resistant S. aureus(MRSA)4株〕,Corynebacterium spp. 44株,Propionibacterium acnes 129株とグラム陽性球菌および通性嫌気性菌が多く分離された.2014年から2016年にかけて,グラム陽性球菌全体に対するモキシフロキサシン(MFLX),ガチフロキサシン(GFLX),レボフロキサシン(LVFX)の平均MIC値は,それぞれ0.42(95%信頼区間:0.27~0.66)μg/mLから0.98(0.60~1.61)μg/mL,0.50(0.30~0.83)μg/mLから1.20(0.69~2.11)μg/mL,0.91(0.51~1.63)μg/mLから2.08(1.09~3.98)μg/mLに上昇していた(p=0.01,p=0.02,p=0.06).
結 論:細菌性角膜炎から分離されたグラム陽性球菌では,2014年から2016年にかけてフルオロキノロン系抗菌薬に対する耐性が増加していた.(日眼会誌123:135-142,2019)

キーワード
細菌性角膜炎, 細菌分離陽性率, 最小発育阻止濃度, 累積発育阻止率, 薬剤耐性
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〒885-0051 都城市蔵原町6-3 宮田眼科病院 上田 晃史
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