論文抄録

第123巻第6号

臨床研究

外傷性低眼圧黄斑症6例の検討
安達 功武, 鈴木 幸彦, 鈴木 香, 工藤 孝志, 中澤 満
弘前大学大学院医学研究科眼科学講座

目 的:最近15年間に弘前大学医学部附属病院眼科(以下,当科)で経験した外傷性低眼圧黄斑症症例について検討する.
方 法:2001年から2016年までに,当科にて外傷性毛様体解離による低眼圧黄斑症と診断した6例6眼(全例男性)を対象とし診療録より後ろ向きに検討した.
結 果:年齢は18~52歳(平均値±標準偏差:32.5±10.7歳),経過観察期間は3~110か月(平均33.6±41.0か月)であった.黄斑症発症時の眼圧は4~7 mmHg(平均6.1±1.1),視力は手動弁~1.2であった.眼底には全例で黄斑皺襞がみられた.低眼圧黄斑症発症後3か月以内に6例中3例で自然経過での改善がみられ,残り3例では手術加療を要した.手術症例では全例,超音波生体顕微鏡(UBM)で広範な毛様体解離がみられた.手術は3例とも解離部に相当する毛様体扁平部に対する直接冷凍凝固とガスタンポナーデを併用した白内障硝子体手術を行った.術後全例で,UBMでの毛様体解離の消失を認めた.最終眼圧は10~20 mmHg(平均15.0±3.4 mmHg)であった.黄斑症持続期間が4か月以内の4例中3例(自然改善2例,手術加療1例)では最終視力は1.2以上と良好であった.
結 論:外傷性低眼圧黄斑症は,経過観察でも自然改善がみられない場合,毛様体解離部への冷凍凝固を併用した硝子体手術が有効と考えられた.(日眼会誌123:712-718,2019)

キーワード
外傷性毛様体解離, 外傷性低眼圧黄斑症, 硝子体手術, 冷凍凝固, ガスタンポナーデ
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