論文抄録

第126巻第5号

臨床研究

裂孔原性網膜剝離に対する硝子体手術後の光干渉断層血管撮影における中心窩無血管域の経時的変化
米田 貴博, 福山 尚, 荒木 敬士, 石川 裕人, 木村 直樹, 五味 文
兵庫医科大学眼科学教室

目 的:裂孔原性網膜剝離に対する硝子体手術後の中心窩無血管域(FAZ)の経時的変化について,光干渉断層血管撮影(OCTA)を用いて観察した.
対 象:2017年11月~2018年2月に裂孔原性網膜剝離に対してガス置換術併用硝子体手術を施行し,初回復位を得られた症例のうち術後3か月以上経過観察できた61例61眼の連続症例を対象とした.3×3 mmのOCTA画像において,術後1,3か月時点の網膜表層FAZ(sFAZ),網膜深層FAZ(dFAZ)それぞれのFAZ面積を検討した.
結 果:61眼のうち術前黄斑剝離群は33例,黄斑未剝離群は28例であった.FAZ面積(sFAZ,dFAZ)は,黄斑未剝離群では術後1か月でそれぞれ0.36±0.12:0.34 mm2(平均値±標準偏差:中央値),0.66±0.12:0.63 mm2,術後3か月でそれぞれ0.36±0.14:0.35 mm2,0.65±0.24:0.64 mm2であり,有意な変化はなかった(それぞれp=0.72,0.64).一方,黄斑剝離群では術後1か月でそれぞれ0.37±0.18:0.39 mm2,0.64±0.24:0.65 mm2,術後3か月でそれぞれ0.40±0.16:0.43 mm2,0.69±0.22:0.69 mm2であり,術後1か月と比較し,術後3か月でsFAZ・dFAZ面積ともに拡大していた(p<0.005,p=0.045).
結 論:OCTAでは非侵襲的に術後のFAZ面積の変化を捉えることができ,黄斑剝離が中心窩周囲の血管に影響を及ぼす可能性がある.(日眼会誌126:525-532,2022)

キーワード
裂孔原性網膜剝離, 黄斑剝離, 中心窩無血管域, 光干渉断層血管撮影
別刷請求先
〒663-8501 西宮市武庫川町1-1 兵庫医科大学眼科学教室 米田 貴博
takataka.19891205@icloud.com