論文抄録

第129巻第7号

症例報告

胸腺腫に合併した悪性腫瘍随伴網膜症の1例
櫻澤 慧1), 植木 智志2), 寺島 浩子2), 福地 健郎2)
1)済生会新潟病院眼科
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科感覚統合医学講座眼科学分野

背 景:視機能が比較的良好に保持された胸腺腫に合併した悪性腫瘍随伴網膜症(CAR)の1例を報告する.
症 例:50歳男性.X-3年に重症筋無力症(MG)を発症し,精査にて胸腺腫が発見された.MG発症1か月後に羞明,夜盲,視野欠損などの視覚障害が出現した.MGの治療として,胸腺腫摘出と副腎皮質ステロイドの全身投与が視覚障害出現と同時期に施行された.その後両眼網膜の変性所見を指摘され,X年に新潟大学医歯学総合病院眼科を紹介受診した.初診時所見:矯正視力は右1.0,左1.2であり,眼底検査で両眼に粗造な網膜色調とわずかな硝子体混濁があった.光干渉断層計では両眼の網膜外層障害と右眼の囊胞様黄斑浮腫が観察され,フルオレセイン蛍光眼底造影では両眼の血管炎様漏出がみられた.網膜電図では両眼ともにa波,b波の振幅低下がみられ,Goldmann動的視野検査では輪状暗転様の視野狭窄が確認された.血清抗recoverin抗体は陰性であったが,特徴的な臨床所見からCARと診断した.発症から3年が経過していたが,視力,中心視野は比較的良好に保たれており,視機能に悪化傾向はみられなかった.
結 論:早期の腫瘍摘出とステロイド療法は,CARの治療および視機能の保持に有効である可能性が示唆された.(日眼会誌129:658-667,2025)

キーワード
悪性腫瘍随伴網膜症, 胸腺腫, 抗recoverin抗体, 自己免疫性網膜症
Corresponding Author(別刷請求先)
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