論文抄録

第116巻第10号

症例報告

イレウスを神経学的徴候とした視神経脊髄炎の1例
高山 圭, 児玉 章宏, 神田 貴之, 竹内 大
防衛医科大学校眼科学教室

目 的:Sjögren症候群を合併し,イレウスが初発の神経学的所見と考えられた非典型的な視神経脊髄炎(NMO)の1例を報告する.
症 例:32歳女性.腹部症状が出現し,麻痺性イレウスの診断にて当院に入院した.Sjögren症候群によるドライアイ症状があったが,入院10日後より両眼に視力低下が出現した.矯正視力は右0.04,左0.6であった.両視神経乳頭の発赤,腫脹を認めた.全身的な神経学的徴候はみられなかったが,髄液細胞増多,造影magnetic resonance imaging(MRI)異常所見からNMOを疑い,ステロイドパルス療法を施行した.その後,イレウス症状は消失し,眼所見も正常に回復した.イレウスを生じる腹部異常所見がみられず,治療後経過,および抗aquaporin-4(AQP4)抗体が陽性であったことから,イレウスを神経学的所見としたNMOと診断した.
結 論:NMOの神経学的所見としてイレウスを生じることがあり,鑑別を要することが示唆された.(日眼会誌116:967-971,2012)

キーワード
視神経脊髄炎, Sjögren症候群, イレウス, 抗aquaporin-4抗体
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