トランスサイレチン(TTR)変異が原因の家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)では,硝子体混濁や緑内障などの眼症状を合併し,罹病期間とともにその頻度と重篤度が増していく.血中TTRの主な産生部位である肝臓の移植により,神経症状の進行抑制と延命が可能となったが,網膜色素上皮からも独自にTTRが産生されるため,肝移植後も眼症状の進行は続く.そこで,まずパイロットスタディとして肝移植後のFAP患者2名の片眼に,TTR産生の減少を目的として汎網膜光凝固術(PRP)を施行し,3年間経過観察した.1名では,PRP未施行眼が重篤な硝子体混濁を来した一方で,PRP施行眼では硝子体混濁が著明に抑制された.もう1名は硝子体混濁による硝子体手術既往眼であり,網膜表面へのアミロイド沈着を観察したところ,PRP施行部位においてアミロイド沈着の著明な抑制を認めた.さらに症例を増やし効果と適応を検討中である.(日眼会誌116:1046-1051,2012)