論文抄録

第116巻第11号

症例報告

片眼性網膜色素変性の長期観察例
加藤 久美子1), 三宅 養三2), 松原 央1), 宇治 幸隆3)
1)三重大学医学部附属病院眼科
2)愛知医科大学
3)国立病院機構東京医療センター感覚器センター

背 景:片眼性網膜色素変性は,片眼のみに網膜色素変性としての病態を呈し,他眼は機能的にも検眼鏡的にも異常のない特異な疾患であるが,本邦においては5年以上にわたって経過観察した症例報告は少ない.
症 例:18歳女性.左眼霧視を主訴に眼科を受診,左眼の求心性視野狭窄が認められた.右眼には検眼鏡的,電気生理学的に異常所見は認められず,片眼性網膜色素変性が疑われた.初診後,8年にわたり外来にて経過観察を行ったが,健眼には異常所見が認められず,片眼性網膜色素変性と診断した.
結 論:片眼性網膜色素変性の1例を経験した.10年にわたる経過観察中に健側に異常が出現したという報告があり,今後も引き続き経過観察が必要と考えられた.(日眼会誌116: 1086-1093,2012)

キーワード
片眼性網膜色素変性, 網膜電図(ERG), 長期経過
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