論文抄録

第116巻第2号

臨床研究

増殖硝子体網膜症に対する硝子体手術成績―25ゲージシステム使用例と20ゲージシステム使用例の間での後ろ向き比較
佐藤 達彦, 恵美 和幸, 坂東 肇, 池田 俊英
大阪労災病院勤労者感覚器障害研究センター

目的:増殖硝子体網膜症(PVR)に対する硝子体手術成績を25ゲージ(G)システム手術と20 Gシステム手術の間で後ろ向きに検討する.
対象と方法:対象は,grade CのPVRに対する硝子体手術を施行し,最終手術から6か月以上経過観察可能であった40例41眼である.男性は23例,女性は17例,平均年齢は44.6歳(13~78歳)であった.20眼で25 Gシステムを用い(25 G群,一部に20 Gシステムの器具を併用したハイブリッド手術例5眼を含む),21眼で20 Gシステムを用いて(20 G群)硝子体手術を施行した.2群間でのPVRに対する手術手技,手術回数,手術時間,復位率,術前後の視力および眼圧について比較·検討した.
結果:2群間で術前背景に有意差を認めなかった.手術手技について,内境界膜剥離を施行した症例の割合は,25 G群で有意に(p=0.020)高かった.手術回数,手術時間について両群間で有意差を認めず,復位率についても25 G群で95.0%,20 G群で85.7%と,2群間で有意差を認めなかった.術後視力は術前に比較して,両群ともに有意な改善(p値は25 G群で<0.001,20 G群で0.003)を認めたが,25 G群では術前に比較して術1か月後から有意な(p<0.05)改善を示すのに対し,20 G群では術3か月後から有意な(p<0.05)改善を示した.また,術6か月後視力は20 G群に比較して25 G群で有意に(p=0.010)良好であった.眼圧に関しては,術前後ともに2群間で有意差を認めなかったが,5 mmHg以下の低眼圧症例の割合は,25 G群に比較して20 G群で有意に(p=0.048)高かった.
結論:PVRに対する硝子体手術において,すべての症例に25 Gシステムのみで対応するには現状では限界もあるが,25 Gシステムでも20 Gシステムに劣らない手術成績が得られる可能性が示唆された.(日眼会誌116:100-107,2012)

キーワード
増殖硝子体網膜症, 硝子体手術, 25ゲージ硝子体手術, 小切開硝子体手術, 低侵襲硝子体手術
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