背景:両眼性の再発性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)の治療中に片眼に脈絡膜新生血管(CNV)を合併したためベバシズマブ硝子体内注射を施行したところ,多発消失性白班と漿液性網膜剥離を併発した1例を報告する.
症例:50歳の女性.29歳時,右眼CSCの既往があった.初診時,右眼CSCと両眼に網膜色素上皮剥離を複数認めた.右眼CSCはレーザー光凝固で治癒したが,その後も両眼に再発をみた.右眼CSC再発時,光干渉断層計で中心窩に網膜色素上皮層のわずかな隆起を認めたが,CSCの軽快とともに消失した.しかしその後1年間に同一部位にCNVを伴いCSCが再発したため,ベバシズマブ硝子体内注射を施行した.注射直後より右眼底には漿液性網膜剥離を伴い網膜深層に大小多数の白色病変が出現したが,3週後にはCNVを残し軽快した.CNVにはその後,光線力学療法を追加して治癒を得た.
結論:ベバシズマブ投与直後にみられた白点症候群に類似した眼底病変は後遺症を残さず自然治癒したが,ベバシズマブ療法のまれな合併症である可能性が示唆された.(日眼会誌116:119-128,2012)