目 的:角膜裂傷に対する生体接着剤の有用性を検討する.
方 法:白色家兎に角膜裂傷を作製し,2種類の生体接着剤,シアノアクリレート系接着剤(ダーマボンド®.以下,ボンド),ゼラチングルー系接着剤(GRFグルー®.以下,グルー)を用いて,裂傷部の閉鎖を行った.また,裂傷部を10-0ナイロン糸で縫合した.これらの創傷治癒効果を術後の経時前眼部所見,組織変化で比較検討した.
結 果:
1)ボンドを用いた創閉鎖は,炎症惹起が少なく,最も良好な角膜透明治癒を得られた.
2)グルーを用いた創閉鎖は,術早期にホルムアルデヒドによると思われる組織壊死を起こし,結果血管侵入を伴い,若干の角膜混濁を残した.
3)縫合は,縫合の良し悪しによって,縫合糸による慢性的な物理的刺激が続く結果,強い血管侵入と角膜混濁,肉芽形成を引き起こす例を認めた.
結 論:生体接着剤は角膜裂傷に対し簡便に使用することができ,創傷治癒に与える影響も比較的少なく,臨床応用できる可能性が示唆された.(日眼会誌116:467-475,2012)