論文抄録

第116巻第5号

臨床研究

アレルギー性結膜疾患診断における自覚症状,他覚所見および涙液総IgE検査キットの有用性の検討
庄司 純1), 内尾 英一2), 海老原 伸行3), 大橋 裕一4), 大野 重昭5), 岡本 茂樹6), 熊谷 直樹7), 佐竹 良之8), 南場 研一9), 深川 和己10)11), 福島 敦樹12), 藤島 浩13), 高村 悦子14)
1)日本大学医学部視覚科学系眼科学分野
2)福岡大学医学部眼科学教室
3)順天堂大学医学部眼科学教室
4)愛媛大学医学部眼科学教室
5)北海道大学大学院医学研究科医学専攻炎症眼科学講座
6)医療法人幸友会岡本眼科クリニック
7)くまがい眼科
8)東京歯科大学市川総合病院眼科
9)北海道大学大学院医学研究科医学専攻感覚器病学講座眼科学分野
10)慶應義塾大学医学部眼科学教室
11)両国眼科クリニック
12)高知大学医学部眼科学教室
13)鶴見大学歯学部附属病院眼科
14)東京女子医科大学医学部眼科学教室

目 的:アレルギー性結膜疾患の診断における自覚症状,他覚所見および涙液総IgE検査キットの有用性に関する検討.
対象と方法:対象は全国28施設において,アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第1版)に基づき準確定診断されたアレルギー性結膜疾患(ACD)患者223例223眼である.その内訳は季節性アレルギー性結膜炎(SAC)84眼,通年性アレルギー性結膜炎(PAC)52眼,アトピー性角結膜炎(AKC)41眼,春季カタル(VKC)38眼,巨大乳頭結膜炎(GPC)8眼である.全例において病型診断,自覚症状,臨床スコアによる他覚所見および涙液総IgE検査を行い,87眼でさらに結膜擦過塗抹標本による好酸球検査を実施した.
結 果:自覚症状の出現率は,眼掻痒感(81.6%)および充血(77.6%)が高値を示した.他覚所見の臨床スコアは,SAC 16.3±3.8(平均値±標準偏差),PAC 16.2±2.8,AKC 19.8±6.5,VKC 23.1±5.3,GPC 21.4±3.9であった.ACD全体での涙液総IgE検査陽性率は72.2%であり,内訳はSAC 61.9%,PAC 65.4%,AKC 80.5%,VKC 94.7%,GPC 75.0%であった.一方,ACD 87眼での好酸球検査の陽性率は42.5%(37眼)であり,内訳はSAC 20.0%,PAC 36.8%,AKC 53.3%,VKC 75.0%,GPC 33.3%であった.涙液総IgE検査と好酸球検査との一致率はκ=0.28(Cohenのカッパ係数)であった.
結 論:涙液総IgE検査は準確定診断されたACD患者で高い陽性率を示したことから,ACD診断のための補助検査法として有用であると考えられた.(日眼会誌116:485-493,2012)

キーワード
アレルギー性結膜疾患, 涙液総IgE, イムノクロマトグラフィ, 涙液検査
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〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1 日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 庄司 純