目 的:アレルギー性結膜疾患の診断における自覚症状,他覚所見および涙液総IgE検査キットの有用性に関する検討.
対象と方法:対象は全国28施設において,アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第1版)に基づき準確定診断されたアレルギー性結膜疾患(ACD)患者223例223眼である.その内訳は季節性アレルギー性結膜炎(SAC)84眼,通年性アレルギー性結膜炎(PAC)52眼,アトピー性角結膜炎(AKC)41眼,春季カタル(VKC)38眼,巨大乳頭結膜炎(GPC)8眼である.全例において病型診断,自覚症状,臨床スコアによる他覚所見および涙液総IgE検査を行い,87眼でさらに結膜擦過塗抹標本による好酸球検査を実施した.
結 果:自覚症状の出現率は,眼掻痒感(81.6%)および充血(77.6%)が高値を示した.他覚所見の臨床スコアは,SAC 16.3±3.8(平均値±標準偏差),PAC 16.2±2.8,AKC 19.8±6.5,VKC 23.1±5.3,GPC 21.4±3.9であった.ACD全体での涙液総IgE検査陽性率は72.2%であり,内訳はSAC 61.9%,PAC 65.4%,AKC 80.5%,VKC 94.7%,GPC 75.0%であった.一方,ACD 87眼での好酸球検査の陽性率は42.5%(37眼)であり,内訳はSAC 20.0%,PAC 36.8%,AKC 53.3%,VKC 75.0%,GPC 33.3%であった.涙液総IgE検査と好酸球検査との一致率はκ=0.28(Cohenのカッパ係数)であった.
結 論:涙液総IgE検査は準確定診断されたACD患者で高い陽性率を示したことから,ACD診断のための補助検査法として有用であると考えられた.(日眼会誌116:485-493,2012)