論文抄録

第116巻第6号

基礎研究

チモロールマレイン酸塩持続性点眼液によるゲル状物質を眼表面に認めた原因の検討
助川 俊之
加賀市民病院眼科

目 的:ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム·フラジオマイシン硫酸塩液(以下,リンデロン®A液)とチモロールマレイン酸塩持続性点眼液(以下,チモプトール®XE点眼液)を併用している患者の眼表面に,5×3 mm大のゲル状物質を認めたため,その原因を解明するために実験を行った.
方 法:症例で生じたゲル状物質は,チモプトール®XE点眼液に含まれるジェランガムとリンデロン®A液に含まれるフラジオマイシン硫酸塩の反応によるものであろうと予想した.そこで,in vitroにてフラジオマイシン硫酸塩などの各種アミノグリコシド系薬剤によるチモプトール®XE点眼液のゲル化を試みた.
結 果:各種アミノグリコシド系薬剤によってチモプトール®XE点眼液のゲル化が認められた.ゲル化に必要なアミノグリコシド系薬剤の濃度は平均約0.2 mMであった.塩化ベンザルコニウム,バンコマイシンなどでもゲル化が確認された.
結 論:チモプトール®XE点眼液含有のジェランガムが,フラジオマイシン硫酸塩によってゲル化したことが原因であると示唆された.アミノグリコシド系薬剤はポリカチオンとして強力にジェランガムに作用していると推定された.(日眼会誌116:554-559,2012)

キーワード
アミノグリコシド, カチオン, ゲル化, ジェランガム, チモプトール®XE点眼液
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