論文抄録

第116巻第8号

臨床研究

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)患者のHAART導入前後の眼合併症
濱本 亜裕美1), 建林 美佐子1), 上平 朝子2), 黒田 聡1), 森本 裕子1), 中川 智哉1), 臼井 審一1), 渡邉 誠樹1), 數尾 久美子1), 大鳥 安正1)
1)国立病院機構大阪医療センター眼科
2)国立病院機構大阪医療センター免疫感染症内科

目 的:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性患者の多剤併用療法(HAART)開始前後の眼合併症について検討する.
対象と方法:当院でHAARTを導入したHIV患者のうち2007年4月から2010年3月までに当科を受診した261例のHAART前後の眼合併症を後ろ向きに検討した.
結 果:HAART開始前にはHIV網膜症41例,サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎23例,その他6例を,HAART開始後にはHIV網膜症5例,CMV網膜炎16例,免疫回復ぶどう膜炎(IRU)4例,その他9例を認めた.HIV網膜症とCMV網膜炎の診断時平均CD4陽性Tリンパ球数は,HAART開始前ではそれぞれ41.8/μl,45.2/μl,HAART開始後ではそれぞれ174.4/μl,116.7/μlであった.
結 論:HAARTによるCD4値の改善後も,CMV網膜炎の新規発症や再燃,IRUの発症などに注意が必要である.(日眼会誌116:721-729,2012)

キーワード
ヒト免疫不全ウイルス(HIV), 多剤併用療法, HIV網膜症, サイトメガロウイルス網膜炎, 免疫回復ぶどう膜炎
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〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-1 国立病院機構大阪医療センター眼科 濱本 亜裕美
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