論文抄録

第116巻第8号

臨床研究

桜江スタディにおける眼底写真の視神経乳頭形状解析
谷戸 正樹1), 相良 健2)3), 高松 倫也4), 木内 良明4), 中川 俊明5), 藤田 委由6), 大平 明弘1)
1)島根大学医学部眼科学講座
2)山口大学大学院医学系研究科眼科学
3)さがら眼科クリニック
4)広島大学大学院医歯薬総合研究科視覚病態学
5)興和株式会社ライフサイエンス事業部開発部開発第一課
6)島根大学医学部公衆衛生学講座

目 的:島根県桜江町で行われた住民健診(桜江スタディ)における視神経乳頭形状の分布を明らかにする.
対象と方法:桜江スタディで1991年度に得られた1,660人の右眼眼底写真のうち,判定不能例を除く1,583人の眼底写真をデジタルファイル化した後,新たに開発した画像解析ソフトウェア(CDSketch)を用いて,乳頭形状に関するパラメーター〔垂直および水平視神経乳頭陥凹径/視神経乳頭径(C/D)比,上方および下方視神経乳頭リム幅/視神経乳頭径(R/D)比,視神経乳頭および視神経乳頭陥凹垂直径/水平径(V/H)比,視神経乳頭黄斑間距離/視神経乳頭径(DM/DD)比〕を算出した.
結 果:垂直·水平C/D比,上方·下方R/D比,乳頭·陥凹V/H比,DM/DD比は,平均値が0.58,0.59,0.20,0.18,1.11,1.09,2.60,中央値が0.58,0.59,0.19,0.18,1.11,1.09,2.57であり,歪度検定の結果いずれもほぼ左右対称の分布を示した.垂直C/D比は陥凹V/H比と正の相関を認めたが,乳頭V/H比とは相関しなかった.垂直·水平C/D比,乳頭·陥凹V/H比はいずれもDM/DD比と負の相関を認めた.
結 論:桜江スタディにおける乳頭形状パラメーターの分布および各パラメーター間の相関を明らかにした.本集団における垂直C/D比は平均値·中央値とも約0.6であった.この値は,過去に報告されている,直像鏡や主観的方法で得られたC/D比より大であった.(日眼会誌116:730-739,2012)

キーワード
桜江スタディ, 住民調査, 視神経乳頭陥凹径/視神経乳頭径(C/D)比, 視神経乳頭リム幅/視神経乳頭径(R/D)比, 視神経乳頭黄斑間距離/視神経乳頭径(DM/DD)比
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〒693-8501 出雲市塩冶町89-1 島根大学医学部眼科学講座 谷戸 正樹
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