目 的:島根県桜江町で行われた住民健診(桜江スタディ)における視神経乳頭形状の分布を明らかにする.
対象と方法:桜江スタディで1991年度に得られた1,660人の右眼眼底写真のうち,判定不能例を除く1,583人の眼底写真をデジタルファイル化した後,新たに開発した画像解析ソフトウェア(CDSketch)を用いて,乳頭形状に関するパラメーター〔垂直および水平視神経乳頭陥凹径/視神経乳頭径(C/D)比,上方および下方視神経乳頭リム幅/視神経乳頭径(R/D)比,視神経乳頭および視神経乳頭陥凹垂直径/水平径(V/H)比,視神経乳頭黄斑間距離/視神経乳頭径(DM/DD)比〕を算出した.
結 果:垂直·水平C/D比,上方·下方R/D比,乳頭·陥凹V/H比,DM/DD比は,平均値が0.58,0.59,0.20,0.18,1.11,1.09,2.60,中央値が0.58,0.59,0.19,0.18,1.11,1.09,2.57であり,歪度検定の結果いずれもほぼ左右対称の分布を示した.垂直C/D比は陥凹V/H比と正の相関を認めたが,乳頭V/H比とは相関しなかった.垂直·水平C/D比,乳頭·陥凹V/H比はいずれもDM/DD比と負の相関を認めた.
結 論:桜江スタディにおける乳頭形状パラメーターの分布および各パラメーター間の相関を明らかにした.本集団における垂直C/D比は平均値·中央値とも約0.6であった.この値は,過去に報告されている,直像鏡や主観的方法で得られたC/D比より大であった.(日眼会誌116:730-739,2012)