論文抄録

第117巻第1号

臨床研究

眼内レンズ縫着術後に生じた後眼部合併症の臨床的特徴
柴田 朋宏1), 井上 真1), 廣田 和成1), 平岡 智之1), 平形 明人1), 大槻 勝紀2), 宇多 重員2)
1)杏林大学医学部眼科学教室
2)二本松眼科病院

目 的:眼内レンズ(IOL)縫着術後に生じた後眼部合併症を検討する.
対象と方法:IOL縫着術後に生じた上脈絡膜出血および裂孔原性網膜剥離に対し,手術を施行した13例13眼について合併症に対する手術前所見と経過を検討した.
結 果:上脈絡膜出血の6眼では低眼圧(3眼;50%)と長眼軸長(3眼;50%)が多かった.4眼(67%)で網膜復位,3眼(50%)で0.1以上の最終視力が得られた.裂孔原性網膜剥離の7眼では,術前裂孔不明(3眼;43%)と,最終的に判明した原因裂孔として上方の弁状裂孔(5眼;71%)が多く,無水晶体眼の網膜剥離の特徴と類似していた.全例で網膜は復位し,6眼(86%)で視力が2段階以上改善した.
結 論:上脈絡膜出血では創口閉鎖不全による低眼圧が危険因子の可能性があり,確実な創の閉鎖が発症予防に重要と考えられた.網膜剥離の発生機序として硝子体ゲルの虚脱と嵌頓が考えられ,周辺部硝子体郭清が予防に有効である可能性がある.(日眼会誌117:19-26,2013)

キーワード
眼内レンズ縫着術, 上脈絡膜出血, 裂孔原性網膜剥離, 術後合併症
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