目 的:人工角膜Boston keratoprosthesis Type I(Boston KPro)移植術後の臨床成績を検討する.
対象と方法:対象は,複数回の角膜移植片不全の既往がある症例にBoston KPro移植術を行い,1年以上経過観察が可能であった6例6眼である.平均年齢は62.7歳で,3眼に緑内障,1眼に角膜真菌症を認めていた.各症例の視力経過,合併症の有無,追加治療の有無を検討した.
結 果:平均観察期間は33.9か月で,術前矯正視力の手動弁~0.02が,術後1か月で30 cm指数弁~1.0と全例で改善し,最終観察期で10 cm指数弁~1.2を維持していた.明らかな術中合併症は認めず,術後合併症は,増殖膜4眼,眼圧上昇,細菌性結膜炎,角膜真菌症再発,後発白内障,嚢胞様黄斑浮腫,硝子体混濁,黄斑前膜をそれぞれ1眼に認め,経過に応じて追加治療を行った.人工角膜の脱落や周辺組織の融解,視野欠損の進行などは認めなかった.
結 論:Boston KProは,適切な術後管理により,良好な長期成績が期待できる.(日眼会誌117:35-43,2013)