論文抄録

第117巻第11号

平成24年度日本眼科学会学術奨励賞 受賞論文総説

脈絡膜新生血管に対するポリプレックスミセルを用いた新規遺伝子治療の確立
青木 彩
東京都健康長寿医療センター眼科

脈絡膜新生血管(CNV)により惹起される加齢黄斑変性(AMD)は依然として治療が難しい疾患である.そのために,より有効な治療の開発が必要とされている.これまでに我々は薬物内包可能な高分子ミセルがenhanced permeability and retention(EPR)効果によってCNVに集積することを示してきた.本総説ではマウスCNVモデルを用いプラスミドベクターを内包した高分子ミセルの静脈内投与による血管新生コントロールの結果について概説する.
我々はまずpoly(ethylene glycol)-b-poly{N-[N-(2-aminoethyl)-2-aminoethyl]aspartamide}block copolymers[PEG-b-PAsp(DET)]とプラスミドDNAの複合体であるポリプレックスミセルがin vitroおよびin vivoにおいて細胞障害性が低く遺伝子導入効率が高いことを明らかにし,マウス角膜新生血管モデルを用いsoluble vascular endothelial growth factor receptor 1(soluble Fms-like tyrosine kinase-1:sFlt-1)発現ベクターを内包したPEG-b-PAsp(DET)ポリプレックスミセルを局所投与することにより角膜血管新生が抑制されることを確認した.
マウスCNVモデルを用いて,さらに改良されたsFlt-1発現ベクターを内包したPEG-C6-P[Asp(DET)]ポリプレックスミセルの全身投与により,CNVが抑制されることを明らかにした.本検討により,新規の高分子ナノデバイスであるPEG-C6-P[Asp(DET)]ポリプレックスミセル用いたCNVに対する遺伝子治療法の実現の可能性が示された.(日眼会誌117:869-877,2013)

キーワード
脈絡膜新生血管, 加齢黄班変性, 遺伝子治療, ポリプレックスミセル
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