目的:視覚野における後天性経シナプス逆行性変性は,近年magnetic resonance imaging(MRI)や光干渉断層計(OCT)を用い視索や神経線維層,網膜神経節細胞複合体(以下GCC)厚の減少で確認されるようになってきた.今回は外側膝状体より後方の脳血管障害後のGCC厚の早期変化を検討した.
対象と方法:発症4年以内で同名半盲を認めた9例を対象とした.OCTにて黄斑部直径6 mmの円内を半盲側と健側に分け,GCC厚および網膜全層厚の両眼の平均値および半盲/健側比を求め比較した.また,GCC厚での半盲/健側比と発症からの時間との関係を調べた.
結果:GCC厚は半盲側で平均89.1 μm,健側で96.6 μm,網膜全層厚はそれぞれ295.7 μm,健側299.2 μmであった.半盲/健側比のGCC厚(0.92)は網膜全層厚(0.99)に比べ有意に減少していた(p=0.042).また,GCC厚の半盲/健側比(Y)は経過時間(X)に対し強い逆相関(r=-0.868,p=0.012)を認め,Y=0.99-0.004×月数(X)であった.
結論:脳血管障害発症後4年間は,半盲側のGCC厚は健側に比べ経時的に菲薄化していく傾向を示し,半盲/健側比の推定減少率は年間約5%となった.(日眼会誌117:918-924,2013)