目的:視力良好な緑内障患者の読書能力を両眼視および単眼視で比較し,中心視野感度との関連を検討する.
対象と方法:両眼ともに視力が1.0以上,両眼視および単眼視でのJapanese version of Minnesota Reading Acuity Chart(MNREAD-J)による読書評価を行った緑内障患者35例(平均値±標準偏差:51.8±12.9歳)とし,読書能力のパラメータである最大読書速度(MRS),臨界文字サイズ(CPS),読書視力(RA)を算出した.正常視覚者33例のパラメータを対照とし,両眼視と単眼視の測定条件の違いによる読書能力のパラメータの比較,およびHumphrey自動視野計で測定した視野感度と各パラメータとの相関について検討した.
結果:緑内障群では正常対照群と比べ両眼視条件でMRS,CPS,RAが(p=0.00044,p=0.00004,p=0.00028),単眼視条件でMRS,RAが有意に低下を示した(p=0.00155,p=0.00142).両眼視条件においてMRSはworse eye傍中心右下の感度が良好なほど向上した(r=0.41709,p=0.04447).CPSは左右眼のmean deviation(MD)値の差および左右眼の傍中心左下の感度差が大きいほど低下した(r=0.40693,p=0.02699およびr=0.41478,p=0.02384).RAは左右眼の傍中心左上の感度差が大きいほど向上した(r=0.33557,p=0.04799).
結論:緑内障患者の読書に関して,左右眼の傍中心視野感度に差が生じている症例では,両眼を用いることが必ずしも有利とはいえない.(日眼会誌117:925-930,2013)