論文抄録

第117巻第12号

臨床研究

人工涙液およびヒアルロン酸ナトリウム点眼液が高次収差に及ぼす影響
山下 力1)2), 越智 進太郎3), 井上 康3), 三木 淳司1)2), 桐生 純一2), 田淵 昭雄1)
1)川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
2)川崎医科大学眼科学教室
3)井上眼科

目 的:人工涙液(AT),ヒアルロン酸ナトリウム(HA)点眼が高次収差に及ぼす影響を検討する.
対象と方法:対象は眼疾患を有さない正常群24名24眼,ドライアイ群11名11眼である.波面センサーを用い,ATおよび0.1%,0.3% HAの点眼前後の高次収差を測定した.瞬目後に10秒間の連続測定を行い,角膜および眼球全体の高次収差(コマ様,球面様,全高次)を瞳孔径4 mmで解析した.10秒間の平均高次収差(AVE),変動指数(FI),安定指数(SI)を算出した.
結 果:正常群はHA点眼の粘性に応じて,すべての高次収差成分のAVEとFIが増加した(p<0.001).ドライアイ群の角膜高次収差では,ATと0.1% HA点眼後に「のこぎり型」から「安定型」となった.
結 論:ドライアイにおいて,ATと0.1% HAの点眼は,角膜高次収差を減少させ光学的特性が改善した.HA点眼液の粘性は高次収差に影響を及ぼすことが確認された.(日眼会誌117:963-970,2013)

キーワード
ヒアルロン酸ナトリウム, 人工涙液, ドライアイ, 高次収差, 涙液安定性
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〒701-0193 倉敷市松島288 川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科 山下 力
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