論文抄録

第117巻第12号

臨床研究

広義の原発開放隅角緑内障患者に対する自動静的視野検査直後の冬期における一過性眼圧上昇
西野 和明, 吉田 富士子, 新田 朱里, 齋藤 三恵子, 齋藤 一宇
医療法人社団ひとみ会回明堂眼科·歯科

目 的:広義の原発開放隅角緑内障患者で自動静的視野検査直後の季節別の一過性眼圧上昇を後ろ向きに比較検討すること.
対象と方法:回明堂眼科·歯科で経過観察中の原発開放隅角緑内障患者53例106眼.男性21例42眼,女性32例64眼.年齢は67.7±11.2歳(平均値±標準偏差).Humphrey自動静的視野検査前3か月以内の直近2回の平均眼圧(pre IOP),検査当日の視野検査直後の眼圧(vf IOP),視野検査後3か月以内の直近2回の平均眼圧(post IOP)を測定算出,それぞれを札幌市の平均気温をもとに分類し,季節別に比較検討した.あわせて眼圧上昇率(%)も(vf IOP-pre IOP)/pre IOP×100と定義し,季節別に検討した.また,視野欠損の程度(mean deviation:MD)と眼圧上昇率との相関についても検討した.なお,検査期間内の白内障手術およびそれ以前に行われた緑内障手術既往眼を除外した.
結 果:vf IOPの平均値は14.5±2.5 mmHgと,pre IOPの平均値13.8±2.4 mmHgより高く(p<0.0001),post IOPの平均値13.8±2.2 mmHgよりも高かった(p<0.0001).眼圧上昇率は春期4.1±11.6%(n=22,p=0.18),夏期0.1±9.9%(n=16,p=1.0),秋期5.0±13.8%(n=30,p=0.11),冬期10.6±8.8%(n=38,p<0.0001)と,冬期に著明な眼圧上昇を認めた.MDと眼圧上昇率には相関がみられなかった(p=0.17).
結 論:原発開放隅角緑内障患者では自動静的視野検査後に一過性の眼圧上昇がみられる.その傾向は冬期に著明で,夏期にはみられないことが示唆された.(日眼会誌117:990-995,2013)

キーワード
原発開放隅角緑内障, 自動静的視野検査, 一過性眼圧上昇, 季節変動
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