論文抄録

第117巻第4号

臨床研究

正常眼圧緑内障に対する第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術の有用性
新田 耕治1)2), 杉山 和久2), 馬渡 嘉郎3), 棚橋 俊郎1)
1)福井県済生会病院眼科
2)金沢大学大学院医学系研究科視覚科学
3)恵寿総合病院眼科

目 的:正常眼圧緑内障(NTG)に第一選択治療として選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)を施行し,その治療成績についてプロスペクティブに3年間観察した結果を検討する.
対象と方法:NTG 42例42眼(未治療が37例,点眼薬を休薬してSLTを施行した症例が5例)にSLT第一選択治療を施行し,途中で受診が途絶えた2症例を除いた40例40眼について検討した.
結 果:眼圧はSLT前15.8±1.8 mmHg,1年後13.2±1.9 mmHg,2年後13.5±1.9 mmHg,3年後13.5±1.9 mmHgで,術前と比べて常に有意に下降した.SLT 1か月後のoutflow pressure改善率(ΔOP)が20%以上の著効群は37/40(92.5%)であった.SLT 3年後の眼圧下降効果の累積生存率は40.0%で,エンドポイントに達したのは,ΔOP 20%未満が2回続いた症例が11/40(27.5%),眼圧下降作用が減衰し点眼治療を開始した症例が10/40(25.0%),SLT再照射を施行した症例が6/40(15.0%)であった.SLT 3年後の累積視野生存率(エンドポイントは,Humphrey視野のGlaucoma Progression Analysisにて2回連続して同一の3点以上の隣接測定点に有意な感度低下を認めた場合の1回目の測定日とした)は82.4%であった.合併症として,結膜充血21/40(52.5%),眼重圧感5/40(12.5%),視力障害(霧視や羞明)4/40(10.0%),眼痛2/40(5.0%)を認めたが,いずれも数日で消失し一過性眼圧上昇や虹彩炎などの重篤な合併症はなかった.
結 論:NTGへのSLT第一選択治療は有効な緑内障治療法の一つであると思われた.(日眼会誌117:335-343,2013)

キーワード
正常眼圧緑内障, 第一選択治療, 選択的レーザー線維柱帯形成術, 眼圧下降療法
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