目 的:ピオグリタゾン塩酸塩製剤の糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する短期的な影響を評価する.
方 法:2003年7月23日から2010年12月31日に聖路加国際病院内分泌内科·眼科に通院し,ピオグリタゾン塩酸塩製剤(アクトス®)内服を開始した570眼中,内服前後3か月以内に眼科を受診し,黄斑部を前置レンズを用いた細隙灯顕微鏡または光干渉断層計で観察した304眼を対象とした.ピオグリタゾン塩酸塩製剤内服開始前にDMEを認めない群,DMEが既存だった群に分け,DMEを認めない群で,内服後にDMEが出現した頻度,DME既存群で,DMEが増悪した頻度を検討した.
結 果:ピオグリタゾン塩酸塩製剤内服前にDMEを認めない症例は,297眼であった.ピオグリタゾン塩酸塩製剤を内服後,DMEが出現した症例は,297眼中1眼(0.34%)であった.ピオグリタゾン塩酸塩製剤内服前にDMEが既存だった症例は,7眼であった.ピオグリタゾン塩酸塩製剤を内服後,DMEが増悪した症例は,7眼中2眼(28.6%)であった.
結 論:DMEを認めない症例では,ピオグリタゾン塩酸塩製剤の内服後早期にDMEが出現する確率は,きわめて低いと考えられる.一方,既にDMEが存在する症例では,内服後早期にDMEが増悪する症例があることから,注意が必要である.ピオグリタゾン塩酸塩製剤内服開始後は,内科医,眼科医が連携し,黄斑浮腫のモニタリングをする必要があるものと考えられる.(日眼会誌117:357-363,2013)