目的:本邦において外斜視と内斜視の患者数の比(以下,XT/ET比)にどのような長期変化が起こっているかを知る.
方法:外斜視と内斜視の初診患者数が記録されていた3つの小児総合医療施設(以下,小児病院)の年報データを検討した.約30年間に及ぶ年度ごとの初診患者のXT/ET比を算出し,回帰分析を行ってこの比の経年変化を調べた.
結果:3病院のすべてでXT/ET比と年度との間には相関係数が0.8より大きい強い相関があり,その比は1.0未満から2.0へと徐々に増大していた.
結論:小児病院における初診患者数からみたXT/ET比は増大する傾向にある.ただし,その意味するところが,近年の健康意識の高まりによる外斜視の受診率の上昇による見かけ上のものか,あるいは,近年,遠視患者が減少してきていることに伴う調節性内斜視の減少によるものか,など今後のさらなる検討が必要と考えられる.(日眼会誌117:427-432,2013)