緒言:顔面奇形を伴う先天鼻涙管閉塞では,鼻涙管形成不全を合併している場合がある.口唇口蓋裂を伴う先天骨性鼻涙管閉塞の1例の経過について報告する.
症例:2歳,男児.両側の涙道閉塞で紹介受診.初診時,computed tomography(CT)で右側の涙道形成不全と左側の骨性鼻涙管閉塞を認めた.既往歴として口唇口蓋裂があった.眼脂が少なく顔面の発育過程のため経過観察とした.6歳時に左涙嚢炎を発症したため,涙嚢鼻腔吻合術(DCR)鼻外法を施行した.8歳時に左涙嚢炎を再発し,再度DCR鼻外法を施行した.9歳時に再閉塞したためDCR鼻内法を施行した.最終手術から6年経過した現在15歳で,通水状態は良好である.
結論:口唇口蓋裂患者に流涙症がみられた場合,鼻涙管形成不全を合併している可能性がある.顔面奇形を伴う骨性鼻涙管閉塞は鼻腔の低形成のためDCR後も再閉塞を来す可能性があり,長期的な経過観察が必要である.(日眼会誌117:433-437,2013)