背 景:網膜静脈炎と網膜静脈炎に沿った網脈絡膜病変を呈し,その病変の広がりから匐行性脈絡膜炎の診断に至った1例を経験したので報告する.
症 例:68歳男性.両眼のぶどう膜炎にて紹介受診.硝子体内細胞浸潤,塊状硝子体混濁,網膜静脈炎,視神経乳頭周囲および網膜静脈炎に沿った灰白色病巣,ならびに嚢胞様黄斑浮腫を両眼に認めた.灰白色病変は連続性に拡大·癒合し,萎縮病巣に隣接して活動性病変がみられたことから,網膜静脈炎を伴う匐行性脈絡膜炎と診断した.プレドニゾロン内服治療により灰白色活動性病変も萎縮病巣となり,網膜静脈炎,黄斑浮腫の消失が得られた.その後再発は認めていない.
結 論:網膜静脈炎を合併し,視神経乳頭および網膜静脈炎周囲に網脈絡膜病巣を呈する副腎皮質ステロイド反応性の非典型的な匐行性脈絡膜炎を経験した.(日眼会誌117:561-567,2013)