論文抄録

第117巻第8号

臨床研究

正常眼圧緑内障での乳頭サイズの視野障害進行への影響
早水 扶公子, 山崎 芳夫
日本大学医学部視覚科学系眼科学分野

目 的:正常眼圧緑内障(normal-tension glaucoma:NTG)の病態に対する乳頭面積の影響を解明するため,同一症例の左右眼の視野障害進行と臨床因子および眼球解剖学的因子との関係を検討した.
対象と方法:眼圧日内変動検査およびHeidelberg Retina Tomograph(HRT)検査施行後5年以上の経過観察可能であり,近視様乳頭を除外した両眼性NTGから,乳頭面積に左右差を持つ16例32眼を対象とした.左右眼を乳頭面積によって小側群と大側群に分類し,Kaplan-Meier生命表分析を用い,視野障害進行を比較検討した.加えて,両群間の臨床因子の比較を行った(Mann-Whitney U test).
結 果:生命表分析の結果,107か月での視野障害進行の累積生存確率は乳頭面積小側群で60±13(平均値±標準誤差)%,大側群で25±11%であった.乳頭面積は視野障害進行に対し有意な関与を認めた(p=0.022,log-rank test).臨床因子では,乳頭面積以外は両群間に統計学的有意差を認めなかった.
結 論:乳頭面積はNTGの視野障害進行に関与することが示唆された.(日眼会誌117:609-615,2013)

キーワード
正常眼圧緑内障, 乳頭面積, 左右差, 視野障害, 進行
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〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1 日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 早水 扶公子
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