論文抄録

第117巻第8号

症例報告

10年以上の長期観察を行った杆体反応の増強を伴う錐体ジストロフィの4例
中村 奈津子1), 角田 和繁1), 藤波 芳1), 篠田 啓2), 富田 香3), 畑瀬 哲尚4), 臼井 知聡5), 赤堀 正和1), 岩田 岳1), 三宅 養三6)
1)国立病院機構東京医療センター感覚器センター
2)帝京大学医学部眼科学講座
3)平和眼科
4)新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野
5)あきば眼科クリニック
6)愛知医科大学

背 景:「杆体反応の増強を伴う錐体ジストロフィ」については国内での報告が少なく,また長期経過についての記載はない.今回,KCNV2遺伝子変異を有する日本人患者について,10年~15年間の長期経過観察を行ったので報告する.
症 例:対象は3家系4例,2例が姉弟(症例1:24歳女性,症例2:17歳男性),2例は孤発例(症例3:17歳女性,症例4:21歳女性)である.全症例で本疾患に特徴的な網膜電図が得られ,黄斑部の色調に軽度の不整を認めた.症例4では経過中に黄斑部に顆粒状変化が生じた.視力は症例1,2では大きな変化はなかったが,症例3,4では経過観察期間中に次第に低下した.光干渉断層計(OCT)では中心窩における視細胞層の異常を全例で認め,特に視力低下の生じた症例3,4で顕著であった.
結 論:本疾患の長期的な経過には症例による違いがみられた.進行度の評価にはOCTが有用であった.(日眼会誌117:629-640,2013)

キーワード
錐体ジストロフィ, KCNV2, 網膜電図, 光干渉断層計, 長期経過
別刷請求先
〒152-8902 東京都目黒区東が丘2-5-1 国立病院機構東京医療センター感覚器センター 角田 和繁
tsunodakazushige@kankakuki.go.jp