レニン·アンジオテンシン系(RAS)は,全身血圧の重要な調節機構であるが(循環RAS),臓器局所では炎症や血管病態に関与する(組織RAS).その中でも(プロ)レニン受容体は,組織RAS活性化のみならずRAS非依存性の細胞内シグナルを伝達して臓器障害の病態生理に寄与することをこれまでに我々は示してきた.糖尿病網膜症は,我が国における主要な失明原因であり,その終末病態は血管新生である.そこで糖尿病網膜症の血管新生におけるRASの関与を明らかにするため,増殖糖尿病網膜症患者眼から採取された手術検体における(プロ)レニン受容体とRAS関連分子の発現を調べ,疾患への関与を検討した.その結果,糖尿病網膜症の線維血管増殖組織においてRAS関連分子の発現が認められ,(プロ)レニン受容体は血管内皮増殖因子(VEGF)と共局在していた.さらに硝子体液では,可溶型(プロ)レニン受容体量が増加しており,VEGF量および血管新生活動性との相関が認められた.これらのことから(プロ)レニン受容体は糖尿病網膜症における病理的血管新生に関与する重要な分子である可能性が示された.(日眼会誌118:916-926,2014)