論文抄録

第118巻第2号

臨床研究

先天鼻涙管閉塞の自然治癒率および月齢18か月以降の晩期プロービングの成功率:後ろ向きコホート研究
林 憲吾1), 嘉鳥 信忠2), 小松 裕和3), 大野 京子1)
1)東京医科歯科大学眼科学教室
2)聖隷浜松病院眼形成眼窩外科
3)佐久総合病院地域ケア科

目 的:先天鼻涙管閉塞の自然治癒率および月齢18か月以降のプロービングの成功率について調査する.
対象と方法:単一施設の後ろ向きコホート研究で,一次医療機関から紹介された初診時月齢18か月未満の先天鼻涙管閉塞を対象とした.18か月まで経過観察し,18か月以降も閉塞が疑われた場合,涙道内視鏡を用いたプロービングを施行した.
結 果:72名82側あり,初診時平均月齢は8.6±5.4か月で,前医での早期プロービング歴のあるものが25側(31%)あった.自然治癒率は12か月で42側(51%),18か月で64側(78%)であった.早期プロービング歴の有無による自然治癒率に有意差はなかった.18か月以降にプロービングを施行した症例は9側(11%)で,全例に涙道チューブ挿入を併用し治癒した.
結 論:先天鼻涙管閉塞は18か月まで保存的治療で,早期プロービング歴の有無にかかわらず約80%で自然治癒がみられた.18か月以降でもプロービングと涙道チューブの併用で高い成功率が得られた.(日眼会誌118:91-97,2014)

キーワード
先天鼻涙管閉塞, 自然治癒, プロービング, 涙道チューブ, 涙道内視鏡
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