論文抄録

第118巻第5号

症例報告

妊娠中に発症·重症化した甲状腺視神経症の3例
神前 あい1), 中村 弘2), 井上 立州1), 井上 吐州1)
1)オリンピア眼科病院
2)Summa Health System

背 景:妊婦の甲状腺眼症は少ないが,妊娠中に甲状腺眼症が発症·悪化し甲状腺視神経症に至った3例を報告する.
症 例:症例1:30歳.妊娠4か月に甲状腺眼症と診断,妊娠8か月に両眼視神経症を発症,視力は右(0.05),左(0.8)まで低下した.症例2:32歳.妊娠後にバセドウ病と診断,妊娠5か月に両眼視神経症を発症,視力は右(0.2),左(0.09)まで低下した.2例はステロイドパルス療法の適応と判断するも同意が得られず,産後治療となった.症例3:31歳.妊娠後にバセドウ病と診断,妊娠9か月で両眼視神経症を発症し,視力は右(0.07),左(0.2)であった.正産期のため産後加療となった.全例とも甲状腺機能はコントロールされていたが甲状腺自己抗体は高値であった.
結 論:甲状腺自己抗体が高値のバセドウ病合併妊娠例において,甲状腺視神経症の発症がみられた.眼症加療に関して産科および内科との緊密な連携の必要性を再認した.(日眼会誌118:433-439,2014)

キーワード
甲状腺視神経症, バセドウ病合併妊娠, 他科連携, 甲状腺自己抗体
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