論文抄録

第118巻第6号

臨床研究

広義の原発開放隅角緑内障患者の長い外来待ち時間による暖期と寒期の一過性眼圧上昇
西野 和明, 吉田 富士子, 新田 朱里, 齋藤 三恵子, 齋藤 一宇
医療法人社団ひとみ会回明堂眼科·歯科

目 的:広義の原発開放隅角緑内障患者の長い外来待ち時間が眼圧に及ぼす影響を,寒期と暖期に分け後ろ向きに検討する.
対象と方法:外来待ち時間を受付から眼圧測定時の間とし,短い場合は30分未満,長い場合は60分以上と定義,また札幌市の平均気温が15度以上になる6月から9月までの4か月間を暖期,5度以下になる11月から3月までの5か月間を寒期と定義した.この気温と待ち時間の2つの定義を合わせて,同一患者における眼圧値を4群に分けた.すなわち,暖期における短い待ち時間(SH30群),暖期における長い待ち時間(LH60群),寒期における短い待ち時間(SC30群),寒期における長い待ち時間(LC60群)と定義した.対象は2013年7,8月に再診し,かつSH30,LH60,SC30,LC60のすべての群の眼圧値が過去8年以内に測定されている広義の原発開放隅角緑内障患者で,かつデータ取得期間に緑内障点眼薬の変更がなかった74例74眼.男性34例,女性40例,年齢67.9±13.4(平均値±標準偏差)歳.右眼のみを解析対象とした.各群で複数の眼圧データが得られた場合は平均値を用いた.その後,各群を比較検討した(paired t test).
結 果:暖期においてSH30は14.6±2.4 mmHg,LH60は14.9±2.4 mmHgで,待ち時間が長い場合,統計学的に有意に眼圧が上昇した(p=0.038).また寒期においてもSC30は14.6±2.4 mmHg,LC60は15.5±2.6 mmHgで,待ち時間が長い場合には統計学的に有意に眼圧が上昇した(p=3.45×10-7).さらにLH60,LC60の2群間では寒期における眼圧上昇が暖期より高かった(p=0.00079).一方SH30,SC30の2群間では有意差はみられなかった(p=0.89).
結 論:広義の原発開放隅角緑内障患者では,外来における長い待ち時間により一過性の眼圧上昇がみられる.それは暖期より寒期に著明であった.(日眼会誌118:508-514,2014)

キーワード
広義の原発開放隅角緑内障患者, 外来待ち時間, 一過性眼圧上昇, 寒期, 暖期
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